突然の下痢でトイレに駆け込んだり、腹痛やお腹の不快感などの症状が繰り返して起こる過敏性症候群。
過敏性腸症候群の原因は主にストレスによって引き起こされるという説が主流になっていますが、原因にはこれ以外にもあるのでないかといろいろな研究がなされています。
今回は、過敏性腸症候群の原因の一つではないかと研究されている糖類や炭水化物の影響についてご紹介します。
●過敏性腸症候群は新しい食事療法FODMAP食事法で改善できる?
最近の研究では、ある種の糖質が過敏性腸症候群の人には消化されずらくそのまま小腸から大腸へ届き、それが腸内細菌によって異常発酵するためガスが発生し、腸の働きが悪くなっているとされています。
これは単なる先端的な研究ではなく、オーストラリアやアメリカではこの考えに基づいた食事療法を実践している人も増えています。
”FODMAP”とは、次の食品を指す略称です。
・FermentableOligosaccharides(発酵性オリゴ糖)
オリゴ糖を含む食品には、レンズ豆、ひよこ豆などがあります。
また、フルクタンも対象になります。
フルクタンを含む食品には小麦、タマネギなどがあります。
なお、フルクタンとはフルクトース (果糖) の重合により生じた多糖類の総称です。
・Disaccharides(二糖類)
二糖類に含まれる乳糖が対象になります。
乳糖は牛乳やヨーグルトに含まれます。
・Monosaccharides(単糖類)
単糖類にはガラクトースや果糖があります。
ガラクトースは甜菜など、果糖は果物やハチミツなどに含まれます。
・And Polyols(ポリオール類)
糖アルコールでありマッシュルームやカリフラワー、くだもの類に含まれます。
以上は大きく分類すると炭水化物に分類されます。
つまりこれは、腸に届くと発酵性のある炭水化物が過敏性腸症候群の原因になっているという考え方です。
通常は、以上のような炭水化物は消化酵素で分解されて、小腸で吸収されます。
しかし、過敏性腸症候群になる人は小腸での分解、吸収がうまくいかないまま大腸に届くため腸内細菌とこれらの糖質が短時間で発酵して、過剰な水素ガスが発生し腸管の働きが悪くなるというものです。
このため、過敏性腸症候群の症状である下痢、便秘、お腹の張りなどが引き起こされます。
FODMAP食事法はFODMAPが多い食品を避けるようにして、過敏性腸症候群の
症状を改善していく方法です。
FODMAP食事法は有効性が認められつつあり、3週間低FODMAP食にすることで約7~8割の方が症状が改善するとされています。
また医学誌などでも有効性が示されています。
(Efficacy of the low FODMAP diet for treating irritable bowel syndrome
: the evidence to date、Clin Exp Gastroenterol. 2016; 9: 131–142.)
●FODMAP食事法のやり方
FODMAPにあたる食品にはいろいろなものがあり、ある食品がどの人にも同じ影響を与えるわけではありません。
なので、FODAMP食事法を始めるには、過敏性腸症候群の原因となる食品を探すことから始めます。
具体的な探し方は次のようにします。
1.最初の3週間は低FODMAPの食品を摂り、高FODMAP食品を控えます。
2.高FODMAP食品で普段食べていたものを一品ずつ摂り入れて、お腹の調子をみます。
3.お腹の調子が悪くなれば自分の体質に合わない食品、調子が変わらなければ自分に合う食品として探していきましょう。
・低FODMAPの食品例
バナナ、ブルーベリー、レモン、グレープフルーツ、人参、セロリ、じゃがいも、かぼちゃ、グルテン抜きパン、米、オーツ麦、ラクトース抜き牛乳・ヨーグルト、豆腐、砂糖など
・高FODMAPの食品例
リンゴ、スイカ、ドライフルーツ、アスパラガス、ブロッコリー、マッシュルーム、小麦、パスタ、クッキー、アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ(ソフト)、ソルビトール、マンニトール、ハチミツ、コーンシロップ、枝豆、大豆など
過敏性腸症候群の原因は、食品だけの問題ではないとされていますが、低FODMAP食品にすると症状が改善されることも確認されています。
低FODMAP食品を厳しく適用しなくくても、意識して高FODMAP食品を減らすだけでも効果が出てくるといわれていますので、症状がひどく悩まれている方はやってみるのも方法かもしれませんね。